ソニーReaderのEPUB3を試す

 ついに来たソニーReaderのEPUB3対応ですが、ニュースには「固定レイアウト型のEPUB電子書籍に対応」などと書かれていて、限定的な対応のようなニュアンスも。リフロー型の電子書籍はサポートされていないのでしょうか。期待とともに不安を感じつつ、さっそく愛用のPRS-T1とPRS-350をアップデートして、その真偽を確かめてみました。

 実は先日来、ソニーReaderのEPUB3対応が遅いのにしびれを切らして、最近評判のいい紀伊国屋書店の iOS・アンドロイド向け電子書籍アプリ「Kinoppy」を相手に、EPUB3ファイルを試作していた所でした。そこに今回の発表です。渡りに舟と、試作した鏡花の「親子そば三人客」のEPUB3ファイルをReaderに読ませてみました。結果はこんな具合。


 上がPRS-T1、下がPRS-350。両方ともちゃんと縦書き・ルビ打ち表示をしています。立派なもんです。これでついにグローバルでオープンなフォーマットに対応した端末を私たちは手に入れました。フリーテキスト、オリジナルな創作、なんだってこれからはこの共通のフォーマットで自由に、そして質高く版行できます。それを、専用端末ではソニーReader、iOSとアンドロイドではKinoppyがしっかり表示してくれます。続く端末・アプリも続々現れるでしょう。そうならないと日本の電子書籍はおもしろくなりません。

 ただし、最初のバージョンですので、もちろん気になることもあります。ご覧のように旧型のPRS-350はゴシック書体で表示されています。XMDFや.bookでは明朝体(たぶんイワタ明朝系)で表示されるのに、EPUBでは読書に適さない書体になってしまいます(そして、このフォントのせいか、一部文字化けも)。一方、PRS-T1では他のフォーマットと同じ筑紫明朝(たぶん)で表示され、文句はありません。

 PRS-350のフォント表示をなんとかできないか、ということで思いついたのは、以前 EPUB2を試した時に有効なのを確認したフォントの埋め込み。inDesignからフォントの埋め込みにチェックを入れて、もう一度 EPUBを書き出し、これを両機に読ませてみました。それがこれ。


 埋め込んだヒラギノ明朝で表示されました。PRS-T1の方もヒラギノになって、個人的にはこっちの書体の方が好みですので、大満足です。ただフォントを組み込んだことによって、ファイルサイズは300KB程度から1メガ程度に膨らんでいます。

 もう一つ気になったのは文字組みの問題。ソニーReaderのEPUB3は、句読点を文中は全角、行末は全角または半角とかなり柔軟に扱っています。また、句読点+受け括弧は半角+全角、または半角+半角になっていて、たとえば約物はすべて全角で押し通している同じReader上のXMDFや.bookの文字組みにくらべて、ワンランク上という感じがします。ただ、気になったのが行頭の鍵括弧。なぜかこれだけはすべて半角取りの天付きなのです。行頭の、特に改行行頭の鍵括弧は1角取りが普通だと思うのですが、なぜこんな風にしたのでしょうか。特に小説では会話が多いので、不自然に半角上った会話の頭が気になります。

 それにしても、ソニーReaderのEPUB3は期待以上の出来だと思います。先日来、復興支援の名目で大きな補助金を受けることになった出版デジタル機構が話題に上っていますが、その「電子書籍フォーマットポリシー」なるものを見ると、EPUB3の「普及は時間の問題」としながらも「一般ユーザーが安心して使用できるビュアーが出現するまで、もうしばらくかかると予想される」として、EPUB3を統一フォーマットに据えることには及び腰な印象です。しかし、ここに来て、スマートデバイスにはKinoppy、専用端末にはソニーReaderという強力なEPUB3デバイスが登場したのですから、そろそろ肚を決めてEPUB3を中心とした電子化を押し進める時なのではないでしょうか。そして、私などもマイナーでニッチな書物にこだわる人間として、このオープンなフォーマットをどんどん活用していきたいと思っています。

2 comments »

  1. panics said,
    4月 28, 2012 @ 4:12 AM

     こんにちわ。
     panics と申します。EPUB 3 へと傾きつつさりとて pdf から離れられない生活を送っておりまして…。
     本日も EPUB 3 ネタを探しながら辿り着きました。
     html / css の仕様にどっぷりとはまった EPUB 3 を自分で、というのはまだ先なのかなと感じております。なにしろ読みたい本は絶対に出回らないのが判っているのですが、先頃右半身の自由を失ってしまい膝の上でページを押さえておくことさえままならず…。スキャナ、カメラと ocr 、 PC でなんとか PRS-T1 で読むデータを作ろうとしていますが…。
     〔オリジナル電子本〕…にあった作品を有難く読ませていただきます。
     時折寄せていただきます。

    • Biokovo said,
      4月 28, 2012 @ 4:17 PM

      コメントをありがとうございます。
      身体が不自由になられた本好きの方にとって、「自炊」が切実な作業であることを教えられた思いです
      本来、電子書籍端末はそういう方にとって僥倖となるべき存在でもあるのでしょうが、遅々としてコンテンツの蓄積が進まない中では、却って歯がゆい思いをしておられる方も多いのでしょう。
      出版社も既存の流通を守ることだけに汲々とせず、読書の自由度の拡大ということにもっと使命とチャンスを見出してほしいものだと思います。
      どのような本をお読みかは分りませんが、例の補助金をどっさりもらって出版デジタル機構が始める電子化事業で、読む人が限られた本にも電子化の光が少しはあたればと期待しています。

      EPUB3はおっしゃるように誰もが簡単に電子本を作れるという段階にはまだ遠いようですが、オーサリングソフトさえしっかりしたものができれば、それも早いのではないかと思います。また現時点でも、私はまだ確かめていませんが、新しい一太郎でスキャン・OCRした(この作業自体が大変でしょうが)テキストを扱えば、意外に簡単にEPUB3が書き出せるということはありませんか。でも、こういう作業自体、本来、出版社や図書館が率先してやるべきことですね。

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